カードローンやキャッシングなどの個人向けの融資サービスの一番の魅力は、手軽にお金が借りられるという点です。利用方法を工夫すれば、家族にすら内緒で借入をすることも難しいことではありません。
しかし奥様や他の家族からすれば、いくら手軽に利用できると言ってもそれが借金であることは事実です。知らないうちにいつのまにかご主人がお金を借りていたことに気づいた時の戸惑いやショックは大きいですよね。
場合によっては、借金の金額が膨らんで返済が難しい状態になって初めて、本人から相談されることもあるかもしれません。
そんな時、ご主人の借金をもうやめさせたい、カードローンを組めなくしたい…と思ったときに、奥様が取れる手段というのは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
家族のカードローンを勝手に止めることはできない
著しい高齢者や障碍者であればともかく、まともな判断力を持っているとみなされる健常な成人のカードローンなどでの借り入れを本人以外が止める・契約できなくするというのは、実はそう簡単なことではありません。
カードローンというのは契約行為ですから、本人が自分の意思で利用を希望していて審査にも通るのであれば、業者としては貸し付けを拒む理由はないのです。そこに家族が介入する余地は皆無です。
また、すでに契約してしまったものに関しては、たとえ家族であっても正式な手続きを踏んで行われた法的にも問題のない契約を本人以外が勝手に解除することはできません。
本人が説得可能なら、貸出自粛登録
時には本人も本心ではカードローンでお金を借りることをやめたいと思っているのにやめられない…というケースもあります。
カードローンのようなサービスの怖いところは、その手軽さゆえにズルズルと利用を習慣化させ、借りすぎてしまう人を生み出しかねないという点にあるのです。
そのような場合には、本人も説得次第でカードローンの利用を止めることに同意してくれる可能性があります。
そこで使えるのが貸出自粛登録という方法です。日本貸金業協会という組織に対して貸出自粛登録の申し出をすると、そこから信用情報調査機関に対して貸出自粛情報の登録が行われます。
信用情報調査機関というのは、個人のカードローンなどの利用に関する信用情報と呼ばれるデータを管理している機関で、この信用情報はカードローン審査では必ず確認されます。
貸出自粛登録の情報は5年間データ上に反映され、その間は万が一カードローンを申し込んでも審査に通らないようになります。
これで向こう5年間はたとえ出来心が湧いたとしても、新たにカードローンを利用することはできません。
ただしこの貸出自粛登録は本人の申し出が絶対に必要になるので、家族が代理で…ということはできないのが難点です。なんとかして本人を説得して、貸出自粛登録まで持っていきましょう。
説得がうまくいくようであれば、貸出自粛登録と同時に現在利用中のカードローンに関しても契約解除をさせることが大切です。
債務整理で借金清算&新たな借入防止
ご主人の借金が明るみに出た時には、すでに返済が難しい状況に陥っていた…という場合に取るべき手段は債務整理です。
ご主人の借金を辞めさせたい奥様にとって、債務整理には2つの利点があります。
- 借金の額が大幅に減る、あるいはゼロになる可能性がある
- ブラックになるので数年間は新たな借金ができなくなる
債務整理にはいくつか種類がありますが、いずれにせよ上手に利用すれば借金の返済は今より確実にラクになります。小さくないリスクを伴うものの、自己破産まですれば実質借金ゼロにすることも可能です。
それと同時に、債務整理を行うと信用情報には事故として情報登録されます。債務整理の内容にもよりますが、事故情報は少なくとも5年から10年は信用情報上に登録が残ります。
この信用情報上に事故登録のある状態をいわゆるブラックと呼び、ブラックになるとその間は原則として新たにカードローンなどを組むことは不可能です。
すなわちご主人の借金を債務整理すれば返済負担が減らせるばかりか今後の借金の抑止にもなるという、まさしく一石二鳥の行為なのです。
ただし債務整理をするにあたっても、貸出自粛登録と同様に本人の意思で行うことが必要になるので、この場合にもご主人をなんとか説得しなければなりません。
ローリスクなのは任意整理
複数ある債務整理の方法のなかでも、比較的ローリスクで手を付けやすいのが任意整理です。
任意整理とは、利息制限法の上限金利にしたがって取引開始時点からの利息を再計算した上で、原則として金利をカットして元本のみを期間を区切って分割返済するというものです。
特にグレーゾーン金利撤廃以前の借金であれば、大きな減額が期待できます。
任意整理は裁判所などを通す法的な手続きとは異なり、弁護士や司法書士を通して業者を直接交渉するものです。
したがって法的な制約を受けることがなく、わりあい事情を考慮した柔軟な対応が可能なのが特徴です。
ただしあくまでも元本の返済を前提とした交渉になるので、借金がゼロになることは原則としてありません。その点は注意が必要です。
最後の手段は自己破産
債務整理の方法としては奥の手ともいえるのが自己破産です。
ただし法律を行使して借金の返済を免れる以上、ある程度の代償は必要となります。
- 一定価格を超える財産は原則処分しなければならない
- 自己破産手続きの期間中は、士業・警備員等の特定の資格制限を受ける
- 政府発行の官報に名前が掲載される
自己破産による主なデメリットは以上の3つです。
基本的には、自己破産は様々な方法を検討したうえでの最後の手段として考えておくことをおすすめします。
『ブラックOK』は絶対NGと伝えてください
ブラックになるとカードローンは利用できなくなると言いましたが、インターネットなどで調べてみると『ブラックOK』というカードローン業者は実は少なからず見つかります。
もしかしたら、ブラックになってしまったご主人がこうした業者でお金を借りられないかと考えるかもしれません。
しかし、ブラックでも融資可能と謳っているようなカードローン業者はほぼ間違いなく闇金融です。
闇金融とは本来必要な営業許可を受けていない違法営業の金融業者で、その利用には少なからず危険が伴います。
- 法外な高利の請求
- 金利以外の支払いの請求
- 強引かつ脅迫的な取り立て行為
これらはすべてカードローン業者としては違法に当たる行為ですが、存在自体が法外である闇金融ではこうしたことが当たり前のようにまかり通っているのです。
闇金融を利用することで本人が大きなリスクを背負うのはもちろんのこと、場合によっては家族をも危険にさらしかねません。
債務整理などでブラックになってしまったご主人には、『ブラックOK』のカードローンは絶対にNGであることをしっかりと伝えておきましょう。
主人の借金を止める方法
ここまでを踏まえてまとめると、ご主人の借金をやめさせたいという場合に考えられる方法は大きく2つに分かれます。
- 貸出自粛登録
- 任意整理・自己破産などの債務整理
ただしどちらの方法を選ぶにせよ、ご主人本人にその意思がなければ実行することはできません。
また、せっかくカードローンが利用できない状態に持ち込んでも、闇金融に手を染められては意味がないのです。
一度カードローンの便利さを知ってしまうと、そこからキッパリ抜け出すのは容易なことではないのは事実です。それでも、大切な家族からの懸命な説得はきっとご主人の心に伝わるはずです。
夫の借金を絶対にやめさせたいと考えているのであれば、まずはじっくりと話し合う時間を持つことから始めましょう。